CGM(持続血糖測定器)とは?医師が基本から解説|血糖値の「見える化」で変わる健康管理

CGM(持続血糖測定器)の基本

CGMは、これまで「点」でしか見えなかった血糖値を「線」として捉え、食事や運動など生活習慣との関係を可視化する技術です。自分の身体を知るための新しい「ものさし」の基本を学びましょう。

CGMとは? 🎬
「点」から「線」で見る健康

24時間自動で血糖の動きを記録するデバイス。従来の点での測定では見逃していた食後の血糖値スパイクや夜間の変動を、連続したグラフ(線)として可視化します。

どうやって測る? 🔬
血液ではなく「間質液」

皮膚の下にある「間質液」中のグルコース濃度を測定。そのため、血液で測る実際の血糖値とは5〜15分程度のタイムラグが生じるのが特徴です。

何がわかる? 💡
自分だけの身体の「ものさし」

食事、運動、睡眠、ストレスといった生活習慣が、身体にどう影響するかを客観的なデータで把握可能に。データに基づいた主体的な健康管理を実現します。


食後の強い眠気、日中の集中力の波、あるいは原因のわからない倦怠感。こうした日常的なコンディションの変化を、これまでは「体感」や「気のせい」として片付けてこなかったでしょうか。もし、その背景にある身体の内部の動きを、映画のように連続して覗き見ることができたら、私たちの健康管理は根本から変わるかもしれません。

それを可能にするのが「CGM(持続血糖測定器:Continuous Glucose Monitoring system)」というテクノロジーです。この記事では、特定のデバイスを選ぶ前に、まず知っておくべきCGMの「基本のき」について、その仕組みから得られる情報まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。

目次

CGM(持続血糖測定器)とは?〜点ではなく「線」で見る健康状態〜

CGMを最もシンプルに説明するなら、「24時間自動で血糖の動きを記録し続ける、小さなウェアラブルデバイス」です。

健康診断や従来の指先穿刺による血糖測定(SMBG)が、ある一瞬を切り取った「写真(点)」だとすれば、CGMが提供するのは血糖変動の「映画(線)」です。食事、運動、睡眠、ストレスといった日々のあらゆる活動が、身体にどのような影響を与えているかを、連続したグラフとして可視化してくれます。

これにより、写真だけでは決して分からなかった、食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)や、自覚のない夜間の変動といった、健康状態を左右する重要な動態を初めて捉えることができるのです。

CGMとは?〜点ではなく「線」で見る健康状態〜 24時間自動で血糖の動きを記録し続ける、小さなウェアラブルデバイスです。 従来の測定(SMBG) 📸 ある一瞬の「写真(点)」 健康診断や指先穿刺では、食後の スパイクや夜間の変動を見逃がします。 血糖値 時間 CGM(持続血糖測定器) 🎬 血糖変動の「映画(線)」 食事・運動・睡眠などの影響を 連続したグラフで可視化します。 血糖値 時間 血糖値スパイク CGMで捉えることができる重要な動態 📈 食後の血糖値スパイク (急上昇) 🌙 自覚のない 夜間の変動 🏃‍♂️ 生活習慣との関係性 (食事・運動など)

どうやって測定しているの?CGMの仕組み

「24時間、血糖値を測り続ける」と聞くと、少し怖いイメージを持つかもしれませんが、その仕組みは非常に洗練されています。CGMは、実は血液を直接見ているわけではありません。

CGMが測定しているのは、血液ではなく「間質液」

CGMセンサーの先端にある髪の毛ほどの細いフィラメントは、皮膚のすぐ下に留置され、細胞の周りを満たしている「間質液(かんしつえき)」という体液中のグルコース(ブドウ糖)濃度を測定します。

これは、川の流れに例えると分かりやすいかもしれません。血液が川の「本流」だとすれば、間質液は川岸の土に染み込んでいる「伏流水」のようなものです。伏流水を調べることで、少し時間は遅れますが、本流の水質(血糖値)の変化を知ることができます。

このため、CGMの測定値には、実際の血糖値に対して5分から15分程度のタイムラグが生じます。これはCGMの特性として理解しておくべき重要なポイントです。

どうやって測定しているの?CGMの仕組み センサーは「間質液」を測定 🔬 表皮 真皮 皮下組織 血液 (血管) 間質液 CGMセンサー フィラメント CGMは血液ではなく「間質液」を測定します。 川の流れの例え 🏞️ 本流 (血液) 伏流水 (間質液) 少し遅れて伝わる 本流(血糖値)の変化は、伏流水に少し遅れて現れます。 結果:測定値に「5〜15分」のタイムラグが発生 CGMの測定値は、実際の血糖値(血液)の変化を少し遅れて反映します。 これはCGMの重要な特性として理解しておくべきポイントです。

CGMシステムの主な構成要素

CGMは、主に以下の3つのパーツで構成されています。

  • センサー&フィラメント: 腹部や上腕などに貼り付けるパッチ部分です。ここから皮下に挿入されるフィラメントは非常に細く柔軟で、装着時の痛みはほとんどありません。
  • トランスミッター: センサーが測定したグルコース濃度の情報を、無線(Bluetoothなど)でスマートフォン等に送信する役割を担います。最近のモデルではセンサーと一体化されています。
  • 受信機(スマートフォンアプリなど): 送られてきたデータをグラフとして表示し、ユーザーがいつでも確認できるようにするアプリケーションです。

CGMで何がわかるの?3つの重要な指標

では、血糖値の変動を「線」として捉えることで、具体的にどのようなことが見えてくるのでしょうか。

  1. 食事へのパーソナルな反応
    CGMがもたらす最大の発見の一つが、食べ物に対する身体の反応が、いかに個人的なものであるかという事実です。「健康に良い」とされる玄米でも、人によっては白米以上に血糖値を急上昇させることがあります。自分の身体がどんな食べ物に、どのくらい、どのように反応するのかを客観的なデータで知ることは、食事選択の精度を劇的に向上させます。
  2. 運動がもたらす効果の可視化
    「食後30分のウォーキング」が血糖値の上昇をどれだけ穏やかにしてくれるか、あるいは高強度のトレーニングが一時的に血糖値をどう変化させるか。運動の効果を目に見える形で確認できるため、モチベーションの維持にも繋がります。
  3. 睡眠やストレスなど、生活習慣との相関
    睡眠不足の翌日は、同じ食事をしても血糖値が上がりやすくなる傾向があります。また、大きなストレスがかかった時に血糖値が変動する様子も観察できます。CGMは、これまで無関係だと思っていた生活習慣と体内のコンディションが、密接に結びついていることを教えてくれます。
CGMで何がわかるの? 3つの重要な指標 📈 食事へのパーソナルな反応

「健康によい」とされる食べ物でも反応は人それぞれ。客観的なデータで自分に合った食事選択が可能になります。

🚶‍♀️ 運動効果の可視化

食後のウォーキングなどが血糖値にどう影響するかを目で見て確認。運動のモチベーション維持に繋がります。

😴 生活習慣との相関

睡眠不足やストレスが血糖値に与える影響も明らかに。生活全体と体調の繋がりが見えてきます。

従来の指先測定(SMBG)との違いは?

CGMと、指先から血液を採って測定するSMBGとの違いを、以下の表にまとめました。

項目CGM (持続血糖測定)SMBG (指先穿刺)
測定のタイミング連続的(数分ごと)測定したい時(スポット)
得られるデータ線(トレンド)点(その瞬間の値)
把握できる情報血糖の変動、全体像、時間帯による傾向特定の時点での血糖値
身体的負担センサー装着時のみ測定のたびに穿刺の痛みがある

まとめ:自分を知るための新しい「ものさし」

CGMは、単に血糖値を測るためだけの医療機器ではありません。それは、自分自身の身体と対話し、これまで知らなかった内部の反応を理解するための、新しい「ものさし」です。

このものさしを手に入れることで、私たちは日々の健康管理を「なんとなく」から「データに基づく」アプローチへとシフトさせ、より主体的かつ効果的にコンディションを整えていくことが可能になります。

まずはこの基本を理解した上で、次のステップとして「では、どのCGMデバイスが自分の目的に合っているのか?」を検討していくことが、テクノロジーを賢く活用する鍵となるでしょう。


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この記事を書いた人

AI physician-scientist・連続起業家・元厚生労働省医系技官・医師・医学博士・ハーバード大学理学修士・ケンブリッジ大学MBA・コロンビア大学行政修士。
岡山大学医学部卒業後、内科・地域医療に従事。厚生労働省入省、医療情報技術推進室長、医療国際展開推進室長、救急・周産期医療等対策室長、災害医療対策室長等を歴任。文部科学省出向中はライフサイエンス、内閣府では食の安全、内閣官房では医療分野のサイバーセキュリティを担当。国際的には、JICA日タイ国際保健共同プロジェクトのチーフ、WHOインターンも経験。
退官後は、日本大手IT企業にて保健医療分野の新規事業開発や投資戦略に携わり、英国VCでも実務経験を積む。また、複数社起業し、医療DX・医療AI、デジタル医療機器開発等に取り組むほか、東京都港区に内科の仁クリニックを開業し、社外取締役としても活動。
現在、大阪大学大学院医学系研究科招へい教授、岡山大学特定教授、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールAssociate、広島大学医学部客員教授として、学術・教育・研究に従事。あわせて、医療者のための医療AI教室「Medical AI Nexus」を主宰。
社会医学系指導医・専門医・The Royal Society of Medicine Fellow

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